Lesson5-6 品質保持を目的とした成分 ・天然香料

香料

香料とは、芳香を持つ成分を指します。スキンケアコスメに限らず、製品をより良いものに仕上げるために使用される添加物の一つです。

原料の独特な香りをマスキングしたり、抗菌性のある香りで防腐効果を高めたり、リフレッシュ効果やリラックス効果といった目的に応じた香料の使用法もあります。さらに、香りによって高級感を演出し、製品の付加価値を高めるといった目的でも使用されます。

日本人は古くから入浴の習慣があるなど、清潔感を大切にした国民性を持っています。他の先進国と比較しても「無臭」「無香」を好む傾向にあり、香水で体臭を消すフランスなどの文化とは大きく異なります。そのような強い香りは日本では好まれず、天然香料を含む合成香料が最も多く使用されています。

 

香料の分類

香料には天然香料と合成香料があります。さらに天然香料は植物性香料と動物性香料の2つに分類され、合成香料は単離香料と純合成香料にの2つに分類されます。また、いくつかの香料を混ぜ合わせたものを調合香料といいます。

天然香料

植物などから抽出される天然香料は1500種ほどあり、そのうち化粧品に用いられるのは200種ほどと言われています。その抽出方法にも様々なものがあり、蒸留や抽出、浸出、圧搾などの方法により、原料に含まれる香り成分が取り出されています。

天然の香料となるため、同じ植物であっても香り成分の含有量は微妙に異なり、いつも同じような香料が取り出せるとは限りません。また産地や収穫時期、収穫年などの環境要因や、圧搾方法の環境なども香りに影響します。

天然香料は、植物性香料と動物性香料に分類されます。

植物性香料

精油とも言われる植物性香料は、現在数百種類以上あるともいわれており、アロマテラピーの流行により身近なものとなっています。実際に使用するのは多くても40程度ですが、精油の中には医薬品として効能が認められているものもあり、アロマテラピーはヨーロッパやアジア諸国では、正式な医療としても地位を確立しています。

植物性香料は、植物全体から抽出する場合もあれば、花やつぼみ、果実、枝葉、幹、樹皮、種子、根茎など部位別に採取される場合もあります。同じ植物であっても、部位により香料の種類が異なる事もあります。

代表的な抽出方法

  • 水蒸気蒸留法・・・原料に水を加えて加熱したり、高温の蒸気を吹き込むことで水蒸気とともに精油を取り出す方法です。
    *ローズ、ネロリ、ラベンダー、ペパーミント、パチュリー、サンダルウッド、イランイランなどの精油を作るのに利用されます。
  • 圧搾法(あっさくほう)・・・原料を押しつぶして精油を絞る、最もオーソドックスな方法です。精油は油なので酸化しやすい性質を持ちます。そのため、圧搾法の中でも特に熱や空気にできるだけ触れないようにして搾る、低温圧搾やコールドプレスという圧搾方法で取り出された精油は、品質が高く高級品となります。
    *柑橘類の香りは熱に弱いためレモン、オレンジ、ベルガモット、グレープフルーツなどの果皮から精油を絞るのによく利用されます。
  • 溶剤抽出法(ようざいちゅうしゅつほう)・・・香り成分が熱に弱かったり、融点が高いために水蒸気程度の熱では取り出せない香り成分の抽出に使用される方法です。「溶剤」とは香料を取り出すための薬剤であり、石油エーテルやヘキサンに香りを溶かしてから抽出する「低沸点溶剤抽出法」や、牛脂・豚脂に植物を挟んで香りを吸わせた後精油のみを取り出す「不揮発性溶剤抽出法」などがあります。
    *ローズ、ジャスミン、チュベローズなどの精油作りに利用されます。

代表的な植物性香料

ローズ、ジャスミン、ネロリ、ラベンダー、イランイラン、チュベローズ、ペパーミント、ゼラニウム、レモン、オレンジ、ベルガモット、サンダルウッド、シンナモン、コリアンダー、クラリセージ、クローブ、パチュリー、ナツメグ、ペッパー、オポポナックス、ベチバー、オリス、オークモス・・・など

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動物性香料

動物性香料は動物の分泌物や結石から抽出したものをいいます。現在は4種しか使用されていませんが、そのいずれも「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」により保護されている動物から採取されるため、大変に入手困難な貴重で高価なものです。

古来より、生殖腺より抽出される天然のものは、いわゆる「フェロモン」剤として珍重されてきました。しかし現在では、良く似た香りを化学的に合成できるようになったために、同様の名前で一般的に出回っているものは、天然物ではない場合が多いでしょう。香水やお香に使用される「ムスク」はその代表です。

代表的な動物性香料

  • ムスク油・・・(麝香じゃこう/musk)ジャコウジカの雄の生殖腺から抽出したもの
  • シベット油・・・(霊猫香れいびょうこう/civet)ジャコウネコの雄雌の尾部にある一対の分泌腺から抽出したもの
  • カストリウム油・・・(海狸香かいりこう/castoreum)ビーバーの雄雌の生殖腺に沿ってある一対の分泌腺から抽出したもの
  • アンバーグリス油・・・(龍涎香りゅうぜんこう/ambergris)マッコウクジラの体内にできた結石から抽出されたもの
Vladimir Wrangel/Shutterstock.com

ジャコウジカ/Vladimir Wrangel/Shutterstock.com