Lesson10-1 子供の肌状態とは

Lesson10では、子供の肌とスキンケアについて学習していきましょう。

私たち大人の肌と子供の肌には性質が異なる点も多くあります。その違いを知ることで、子供の肌に適切なケアを行えるようになります。

Lyubov Kobyakova/Shutterstock.com

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子供の肌状態とは

赤ちゃんや子供の肌はツルツルですべすべですが、機能が未発達で未熟なため肌トラブルが起こりやすい肌でもあります。子供の肌の特徴や起こりやすいトラブルについて見ていきましょう。

 

子供の肌の特徴

  • 大人と比較して格段に代謝が活発である。
  • 汗腺自体は未発達だが、汗腺は大人と同じ数がある。これにより汗をかきやすいが、汗腺で詰まりやすくなる。
  • 角層の厚みが大人の50%ほどしかないため、薄くてデリケートである。
  • 皮脂分泌量が時期によって異なり、肌のバリア機能が安定しない。
  • バリア機能が未成熟のため、外部からの刺激に弱く様々な肌トラブルが起きやすい。
  • バリア機能が未成熟のため外部物質の吸収率も高く、大人と同様の塗り薬では強すぎることもある。

 

子供の皮脂量の変化

①新生児 (生後4週間まで)

皮脂分泌の機能は未熟だが、母体からの影響で一時的に皮脂分泌が多くなる。

②乳児期 (生後4週間〜1年まで)

生後2〜3ヶ月頃から皮脂分泌量が減少する。

③幼児期 (生後1年〜6年まで)

皮脂分泌量が一生涯でもっとも少なくなる時期。

④学童期 (生後6年〜12年まで)

思春期の成長過程において、皮脂の分泌が活発になる。

 

子供の肌に起きやすいトラブル

fotorawin/Shutterstock.com

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脂漏性皮膚炎

髪の毛の生え際、眉、小鼻まわりといった皮脂分泌が多い部分に、カサカサした湿疹ができる症状です。回復のためには肌を清潔に保つことも大切ですので、新生児は特に引っ掻かないよう爪をこまめに切っておくようにします。

  • 新生児〜生後2ヶ月、思春期に起こりやすい。
  • ホルモンバランスの乱れやビタミンB群不足が原因の一つ。
  • 皮膚が赤くなり、かゆみ・フケが出る。
  • 肌を清潔にすることを心がける。

あせも

汚れや垢が汗腺の出口に詰まり、皮膚の中に蓄積され炎症が起きている状態です。子供は汗腺が未発達なため、適切に排泄することができずにあせもが出来やすくなります。

  • 白っぽく水ぶくれのような症状と赤い小さな発疹(吹き出物)ができる。
  • かゆみやヒリつきを感じることもある。
  • 綿素材など吸湿性に優れた肌着の着用や肌を清潔に保つことを心がける。
  • 汗を放置しないようタオルで拭う・着替えさせる。

※従来はステロイド外用剤を塗ってケアする方法が一般的でしたが、その弊害が近年様々な所で研究されています。ステロイド剤は非常に強力な薬剤であり依存性が高いものです。デリケートで未完成の子供の肌は特に、使用を控えるようにしましょう。

一次刺激性皮膚炎(かぶれ)

身の回りにある生活環境要因の科学物質が、皮膚に接触して刺激を与えることにより、接触した部分に痒みが起こることを接触性皮膚炎と言います。一次刺激性皮膚炎は、洗剤や溶剤、粘着剤などの化学物質に接触することによって生じる皮膚炎(かぶれ)であり、原因物質に触れたら誰でも起こる可能性があります。

  • 洗剤・柔軟剤・ボディーソープなどに含まれる成分が刺激となり、炎症が起きる。
  • 衣類に残った成分により炎症が起きる場合は、温水を利用したりすすぎ回数を増やすなど、すすぎをしっかり行うようにする。
  • 小さい子供がいる場合は特に、無添加洗剤など肌に優しいものを使用する。

乾燥肌・小児乾燥性湿疹

皮脂腺が未発達の子供の肌は乾燥しやすく、かゆみを我慢できずに掻くことにより炎症・湿疹が出ることがあり、これを小児用乾燥性湿疹といいます。肌の乾燥により角質層のバリア機能低下がおこるとかゆみを生じますが、子供はそのかゆみを我慢できないために掻いてしまい、さらにバリア機能が低下し肌の乾燥が進行しカサカサになるという悪循環が起こるのです。

  • 皮脂の分泌量が減少する幼児期〜学童期に起こりやすい。
  • かゆみが出るため、掻いてしまうと炎症が起き小児乾燥性湿疹になる。
  • 掻かないようにしたり、掻いても刺激が最小限になるように爪を清潔に短くしておく。
  • ワセリンなどの保湿ケアを十分に行う。

 

子供の肌トラブルにおける注意点

  1. 子供は肌の異常(かさぶたや発疹、かゆみやヒリつきなど)が起こると、無意識にその箇所を掻いてしまいます。炎症が起き細菌感染も起こり得るため、爪を丸く・短く切りそろえておくようにしましょう。
  2. 皮膚科に通院するとステロイド外用剤などを処方されますが、ステロイド剤には他の化学薬品同様メリットとデメリットがあります。症状の改善が見られない場合、異常が発生した場合にはすぐに、医療機関での診断を受けるようにし、不安な場合は事前に医師と相談しておきましょう。

ステロイド外用剤とは

ステロイド外用剤については様々な意見があり、90年代には大きなバッシングの波もありましたが、局部のアレルギーを押さえ込む力が強く、アレルギーが生じている場合にはメリットが多いものも事実です。ただし強い薬には副作用もあり、使用法や容量を守って使用する必要があります。

ステロイド外用薬の特徴

  • 薬効成分として合成副腎皮質ホルモンを配合している。
  • 湿疹・皮膚炎症に効果を発揮する。
  • 副腎皮質ホルモンは体内の副腎(腎臓の上にある分泌器官)からつくられるコレステロールからなる。
  • 副腎皮質ホルモンは、炎症を起こすタンパク質の生産を抑え、炎症を抑えるタンパク質を生成する。

ステロイド外用剤の強さ

ステロイドは5種類の強さに分類されます。症状やアレルギー箇所により使い分ける必要があります。

steroid

(※コルテス軟膏、クリームは平成19年に販売を中止しております)

ステロイド外用剤の作用・副作用

ステロイド外用剤は局部的なアレルギーを抑制するために活躍する一方で、副作用とも呼べるデメリットもあります。

皮膚の菲薄化・毛細血管拡張

皮膚が薄くなってバリア機能が弱まり、それにより皮膚下の毛細血管の浮き上がって見えるよういなります。
ステロイドはアレルギーを抑えると同時に、皮膚の細胞生成も抑制する働きがあります。薬の強度、量、使用箇所など適切に使用していれば問題ないとされていますが、それでも長期間の使用により、特に頬部、前胸部、肘部、指先などにこのような症状が出やすくなります。

皮膚の感染症に弱くなる

ステロイド外用剤は、アレルギーを抑えることができますが、同時に皮膚表面の免疫系の働きも抑制します。この副作用により、ヘルペス感染症や乳児のカンジダ症にかかりやすくなったり、症状が悪化する可能性があります。

その他の副作用例として、創傷治癒遅延、紫斑、多毛など様々な報告もありますが、特に注意すべきは上記の2つです。自分の大切な子供を守れるだけの正しい知識を自分で身につけるようにしましょう。