Lesson1-5 8つの皮膚機能

ほんの数ミリの中に複雑な構造がある皮膚ですが、私たちの体の表面を覆っている皮膚には重要な働きがあります。

Irina Bg/Shutterstock.com

Irina Bg/Shutterstock.com

①感覚機能

体の表面を覆っている皮膚をはじめ、口腔こうくう鼻腔びくう,角膜などの粘膜にも温度や痛みを感じる神経線維があり、様々な感覚を受容体によって感じ取る機能があります。皮膚で感じ取れる感覚は皮膚感覚と呼ばれ、下記の5つに分かれています。

皮膚感覚

  • 触覚(しょっかく)
  • 圧覚(あっかく)
  • 温覚(おんかく)
  • 冷覚(れいかく)
  • 痛覚(つうかく)

それぞれの感覚の受容体は体の部位により分布が異なり、痛覚は角膜や歯髄しずいなどに密集し、触覚や 圧覚は指先や舌先が敏感です。また一般的には温覚よりも、温度の低下に対する冷覚のほうが敏感と言われています。

 

②保護機能

■物理的力に対する保護機能

皮膚の表面は角質細胞が覆っているため、多少の刺激では肌の奥にある細胞に傷が付ことはありません。皮膚には弾力性があり、外部からの刺激は真皮や皮下組織が緩衝剤かんしょうざいの役割を果たします。また皮下脂肪はクッションのように働くことで外界からの物理的力を吸収し、外傷を負っても内臓などの重要な臓器には及ばないようになっています。
また、表皮のケラチンにより摩擦刺激に対する保護機能も備えています。

■化学的刺激や病原微生物に対する保護機能

表皮の角質層とその細胞間脂質は、ラメラ構造という大変に強い構造を形成しており、角質層では表皮細胞由来の脂質成分とNMF(天然保湿因子)が何層にも重なり合ってラメラ構造を作っています。この構造により、皮膚は水や化学物質の侵入を防いでいます

drip-229963_640

また、皮脂膜は皮膚常在菌の働きにより、pH5.2~5.8の弱酸性を保ち、殺菌作用を持つ事で、正常な皮膚はほとんどの病原微生物を通しません。さらに表皮にあるランゲルハンス細胞(マクロファージ)も細菌の侵入を防ぎます。ただし、多量に汗をかき皮膚がアルカリ性に傾くと、細菌に感染しやすくなります。

■紫外線に対する保護機能

紫外線から身体を守るために、表皮基底層にあるメラノサイトがメラニン色素を作り、紫外線を吸収、紫外線が真皮に侵入するのを防ぎます。また、角質層においても、抵抗力の強いケラチンが紫外線の5~10%を反射させる機能を持っています。
日焼けした皮膚は、角質層が厚くなることでより紫外線刺激から保護しようとしますが、これが乾燥やシミ・シワなどの老化現象の要因となります。これは光老化とも呼ばれます。

 

③保湿機能

肌の水分量は外界の湿度によっても影響されますが、基本的に正常な肌の場合には、皮膚の水分量は角質層で約15~20%、角質層よりも下の皮膚では60~75%に保たれています。この層による水分量の違いは角質層と顆粒層の間にあるバリアゾーンが関係しており、これにより体外からの水分侵入を防ぎ、体内の水分を逃がさない構造となっています。

角質細胞内には水分保持能力の高いNMFが存在し、水分保持機能を果たします。またセラミドなどの細胞間脂質も、皮膚の表面を滑らかに整えて角質層からの水分の喪失を防ぎ、さらには皮膚表面を覆っている皮脂膜が水分の蒸散を防ぎます。このように、皮膚の保湿にはNMFやセラミドなどの細胞間脂質、皮脂膜が関与しています。

 

④体温調整機能

人間は恒温動物こうおんどうぶつであり、外界の温度に関わらず体温を約36〜37℃の一定に保つ事ができる生物です。これはホメオスタシス恒常性維持機能こうじょうせいいじきのう)の働きによります。
この体温の維持のために、皮膚は汗を分泌して体熱を放散し、寒いときには毛孔を閉じて体熱の放散を防いでいます。また、血管を拡張・収縮させることにより体温を調節を行っています。

 

⑤分泌・排泄機能

皮膚は皮脂腺から皮脂を分泌し、エクリン腺からは汗を分泌しています。この皮脂と汗が乳化して皮脂膜を形成し、肌の保護機能を果たしています。
また汗は体内の老廃物を排出する役割も担っており、腎臓の負担を軽減させます。また、皮膚呼吸により微量の二酸化炭素を排出しています。

 

⑥吸収機能

角質層はその皮脂膜などの保護機能により、体内まで水溶性物質を通さない構造になっています。しかし脂溶性物質や化学物質には、皮膚の表面から浸透し体内に吸収されるものもあります。これを経皮吸収けいひきゅうしゅうといい、経皮吸収されたものは血液にのって全身に運ばれていきます。
角質層を潤すためのスキンケアコスメは、表面を潤すため奥まで吸収される必要はありませんが、精油などはこの経皮吸収を目的として用いられるものもあります。

経皮吸収されやすい物質

  • 脂溶性ビタミン・・・ビタミンA.D.E.Kなど
  • 女性ホルモン・・・エストロゲンなど
  • ステロイド
  • 分子が小さい重金属・・・鉛や水銀など

 

⑦貯蔵機能

皮下の脂肪細胞には脂肪が蓄えられており、これはエネルギー源としての 役割を果たします。同時に体内の内臓などの重要器官を外界の刺激や衝撃から保護する役割も果たしています。

 

⑧ビタミンD生成機能

皮膚は紫外線を受けることでビタミンDを活性化させる機能を保持しています。カルシウムはビタミンDにより吸収率が高まるため、骨の形成などにも用いられます。